◆[Note:05] 花嫁人形 [カタン<第二集>]

4曲目の「とおりゃんせ」から引き続き「カタン<第二集>」のホラーゾーン(笑)を形成する「花嫁人形」。ホラーといえば(?)この方、アレンジは鬼才・弘田佳孝さんです。弘田さんは前作の「無印カタン」でも「曼珠沙華」でひんやりとした怖いけれど美しい弘田節全開のアレンジをして下さいましたが、今回も同じ系譜に属するアレンジ。というか、さらに内向的に進化したというべきかもしれません。

この「花嫁人形」という曲、「花嫁」という人生で最もめでたく幸多い瞬間に関わるもののはずなのに、何故か曲調も暗く、詞にも婚礼に相応しからぬ「泣く」「切れる」などの言葉が続々と出てきます。どう聴いても幸せそうには思えない、と聴き進めていくと、花嫁御寮を唄っていたはずの詞は最後には人形にすりかわってしまう。なんとも不条理で不安で、だからこそ詩的な世界観。(この不条理だけど不安定で控えめに耽美な感覚、他にも何処かで…と思ったら作詞家の松井五郎の詞に同じ血を感じるのでした。)
似たイメージの曲に「うれしいひなまつり」などがあるのですが、唱歌の中にある女子の祝い事に関わる曲は何故か物悲しさを感じるものが多いのです。この矛盾は子供の頃からわたしの心の中に抑圧的なイメージを生み、独特の翳を残しました。
数多の悲しみや不条理を喉元へ押し込め、飲み下したそれは胎内で一種の呪いに似た感情に孵化する、この曲にはそういった「少女の業」のようなものを感じずにはいられない。「曼珠沙華」よりもさらに静謐に硬質に冷たく、肉体性を排除したかのようなアレンジと強い感情表現を抑えた声で語られる「花嫁人形」には、まさにその「秘めたる感情」が通底しています。しかし異性でありながらこういった感情や「業」を理解でき、表現できてしまう弘田さんという人は、やはり特殊な感性を持っているのだな、と思います。

*
作詞は当時人気の抒情画家でもあった蕗谷虹児。挿絵画家、作詞家、フランスでの画家活動、戦後はアニメの製作にも携わったりと、様々な顔を持つマルチプレイヤー。当時の抒情画家はどちらかといえば幼さを残した夢見るような少女を描くことが多かったのですが、虹児の画はモダンでシャープ。渡仏生活から得た巴里のエスプリの反映、また、浮世絵の構図をソースとして取り入れていたという話もあり、独特の隙間感とダンディズムを感じさせます。
そして虹児は「抒情画」という言葉の生みの親でもあります。「抒情詩」があるのだから「抒情画」があってもいい、とそう言って、ただ状況を説明するだけの挿画に留まらず、画の中に感傷的な余韻を残し感情や想いを伝えるような絵を、ときの少女雑誌と挿画の新しいジャンルとして啓蒙したそうです。

そんな虹児のこの曲も、みとせのりこの好きな唱歌の五指(否両手…)に入る曲ですが、そうやって数えていくととにかく子供の頃からわたしは暗い曲が好きだったんだな〜と呆れざるを得ません。
三つ児の魂どんより系。

◆[Note:04] とおりゃんせ [カタン<第二集>]

やってきました通称「呪いのとおりゃんせ」。わたしの中では「アグレッシブとおりゃんせ」なんですけども(呪いというならヨルガライヴでやった「ホラーとおりゃんせ」の方が呪われそうな気がします)。まさかあの導入直後にアップテンポ de ジャカジャカ(笑)になるとは思わなかったことでしょう(笑)。

多重録音+アップテンポ、国籍不詳、前代未聞の方向性を持ったこの「とおりゃんせ」、アレンジはDaniさんにお願いしております。基本のコンセプトと声部のだいたいの構成、展開などをみとせが声だけ一発録りでがんがん重ねたDEMOをDaniさんに渡して、
「こんな感じでこんな展開で、ここで壷井さんがはいってきゅいーんでぎゅわーんで最後のBメロは楽器隊バトルでお願いしまっす!あ、Daniさんも遠慮なくベースぶいぶい弾いてくだサイ。」
とお伝えしたらこうなりました(笑)。

声だけ多重DEMOを渡したら、Daniさんから開口一番、「あのー、立岩さん召喚していいですか?」と。かくしてKBB+ポチャカイテマルコwithみとせという状態になった「とおりゃんせ」、ある意味予想通りというかある意味予想以上というか、非常にテンションの高い曲になりました。

ちなみにDaniさんが弾いているギターっぽいけどちょっと違う楽器は、Daniさん自らギターを改造して作った自家製ブズーキ。一応アイルランド出身の楽器です、ということにします(笑)、ブズーキだし。
立岩さんが叩いているのはタブラとリクといって、前者はインドの楽器、後者はエジプトやシリアあたりの楽器。
壷井さんが弾いているのはアコースティックヴァイオリンですが…壷井さんですしね…。
ベースはフレットありの五弦(普通は四弦)のはず…なんですけどDaniさんが弾くとフレットレスに聴こえる(笑)。
なんだかもうものすごい国籍混交状態です。ついでに奏者の演奏も超絶混交状態です。でも何故か和風に聴こえるこの不思議。ディレクション役のDaniさんの匙加減と配分の妙です。

聴きどころは?と問われたら、全部ですと答えるしかありません。
多重で重ねた声のおどろげなるも美しい和声や掛け合い、もうどうやって弾いてるんだか判らないヴァイオリン、パーカッション、全体を牽引するブズーキと底部を支えつつうねるベース。それらが絡み合って展開していく中に見える世界観、そして奏者の個性を心行くまで堪能して下さい。


*
原曲は言わずと知れたジャパニーズトラッド、日本のわらべうたです。江戸時代にできたものとされる説が有力ですが、歌詞の解釈には諸説あってどれも決め手に欠ける印象。なのでここには書きません。むしろこの謎の多い歌詞については独自の幻想で解釈した方が情景が広がるように思います。

実はこのアップテンポ多重の「とおりゃんせ」はずいぶん昔からわたしの中に構想として存在していて、音も鳴っていました。ヨルガライヴでやったホラーヴァージョンの方はこのアップテンポ版からの派生で作ったものです。とはいえあのスローでダウナーでホラーな「とおりゃんせ」もとても気に入っているので、いつか「ホラーとおりゃんせ」も何かのアルバムに収録したいなあなどと野望を抱いております。

それにしても、アレンジをしてくれたDaniさんはわたしの元DEMOから基本部分はほとんど変更せずにこの形に見事化けさせて(笑)下さいました。「変えるところは変えてもらって、ソロの尺も好きなだけ延ばして下さいね」とお伝えしてあったのですが、「んー、でもこれ長さも構成もちょうどいいし、変えるところないですよ」と仰ってくださって。
絶対音感もない、コードの知識もない、アレンジもできない、耳だけが頼りの音楽劣等生みとせのりこ、なんだかこれまでの音楽人生(音楽始めたばかりの頃からすごい人たちに囲まれてずーっと凹みながらやってきたので…)が報われたような気がしてとても嬉しうございました。そんな意味でみとせ個人の中でのみ、記念碑的な1曲です(笑)。
でも、ソロはきっちり一回り分延ばしてもらったけどね!!☆

Daniさん、壷井さん、立岩さん、素敵な楽器バトルを有難うございました。
ごはん3杯。

◆[Note:03] メリーさんの羊〜アルプス一万尺 [カタン<第二集>]

雰囲気の違う曲が1曲ごとに登場する「カタン<第二集>」序盤の展開の最POPチューン、「メリーさんの羊〜アルプス一万尺」。アレンジは”ひねトラッドPOP”バンド(とみとせは思っている)のオオフジツボさんです。オオフジツボ、と言っても分解すればみとせにとってもカタンシリーズにとってもおなじみのメンバー、太田さん、藤野さん、壷井さんですが(笑)。

この「メリーさんの羊〜アルプス一万尺」のチェインは、以前Rivendellさんと一緒に唱歌ライヴをやっていたときのヴァージョンをベースにアレンジをお願いしていますが、そこにさらにオオフジツボエッセンスをプラスして頂きました。ギター、アコーディオン、ヴァイオリンの掛け合いと一体感、ポルカを挟んだトラッド展開は、「無印カタン」=1枚目の雰囲気を引き継ぎつつも「第二集」の空気によりマッチした力強さを備えています。

「第二集」では4曲ほど同時録音、所謂「一発録り」の曲がありますが、この「アルプス一万尺」も一発録り。しかも事前リハなし、DEMOだけ聴いて収録日に現場で何度か合わせて、そのまま収録に突入しました。そのため考えすぎない(笑)のがいい方向に作用したか、ライヴのような瑞々しさと勢いのあるいいテイクが録れました。個人的にきゅんときたのは4コーラス目、合いの手のかわりに入る藤野さんのアコーディオンのキラキラ感をどうぞご堪能下さいませ。

そしてこの曲は「無印カタン」でもちらほらとやっておりました、みとせのりこの補作詞あり。本来の歌詞を唄っているのは3番までで、4番~6番はみとせの書いたものです。かつてライヴでやっていたときは実は7番まであったのですが、今回は6番を割愛して5のあとに7がついております(笑)。この先ライヴでやることがあれば7までやるかもしれませんし、展開が増えたら8やら9までのびるかもしれません(笑)。というような緩さもこの曲ならでは、といえるかと思います。

*
何故この曲ならでは、かというと、実は「アルプス一万尺」、なんと29番まで歌詞があって、作者が全部バラバラだと言われているからです。
「アルプス一万尺」として知られるこのメロディ、生まれはアメリカ。スイスとかあっちの方だと思っていた方も多いと思いますが、本来のタイトルは「ヤンキー・ドゥードゥル」といって、当時のアメリカが英国兵を皮肉ったものでした。
ではそのメロディに日本語詞をつけたのは誰かというと、某大学の山岳部の学生たちだと言われています。おそらくは日本アルプスに登った学生たち、キャンプしながら適当に替え歌を作って唄い、それが代々引き継がれ、新たな山岳部員がまた続きをつくり…していくうちに、なんと29番。きっと本来はもっとたくさんあったけど、書き残されているものがこれだけだったのだろうなと想像します。ですので時の山岳部員の皆様に倣いつつ敬意を表し、みとせ流「アルプス一万尺」を一節。ひそやかに山男たちの末席に加えさせて頂いたのであります。

ちなみに1番の歌詞に出てくる「小槍」というのは、日本アルプス山頂付近の岩場の呼称で、ここが標高3000メートル強=ちょうど一万尺。つまりこの「アルプス一万尺」のアルプス、海外のアルプスではなく、なんと日本アルプスのことなんです。
アメリカ民謡が日本アルプスに変化し、唄い継がれるうちにイメージだけが残ってスイスあたりに飛んでしまうこの不思議。まさに国境を超えたノスタルジー(笑)を体現していると言えるでしょう。

冒頭につけた「メリーさんの羊」もアメリカ民謡で、なんとなく似た雰囲気のPOPさをもちあわせているためライヴでもチェインで演奏してきましたが、ライヴの際はメリーさんの部分はアコーディオン独奏でした。今回はみとせのソロアルバムで、かつ1コーラスしか出ないこともあり、みとせが唄わせて頂いております。

みとせにしては珍しい明るくPOPでキュートなこのチェイン、楽しんで頂けていれば幸いです。

…ヘィッ!☆


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http://www.team-e.co.jp/sp/cotton2/
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◆[Note:02] 椰子の実 [カタン<第二集>]

アマゾンさんの在庫もちゃんと復帰して、メールフォームやツイッターからもぽつぽつ到着報告など頂いております。ああよかった、安心しました!予約してあった筈なのに発売日に届かなかったときのがっかり感と言ったら、みとせ個人も一リスナーとしてCDを買ってそうなった場合を考えると100がっかりくらいは行くので、お察しすると共に申し訳ない気持ちでいっぱいですが、待った分たくさん楽しんで頂けたらとても嬉しいです。

さてさて、本日も「カタン<第二集>」について行ってみたいと思います。ご興味のある方はどうぞお付き合い下さい。

*
2曲目は「椰子の実」。1曲目の重さと物悲しさを払拭するウォームな印象の曲です。…と言いながら、実は歌詞はかなりせつない望郷の詞なんですけれども。
この曲もアレンジは太田さん。
太田さん編曲が冒頭から2曲続きますが、太田さんはこの「第二集」では前回のRivendellさんが担っていたポジションを担当しています。つまりアルバム全体の「背骨」です。1枚目と2枚目のカラーの違いはこの背骨役の方の音楽的キャラクタァによっても方向付けられているように思います。

この曲に関してはみとせの中で、ギター主体でウォームにやわらかく、というある程度明確な方向性があって、この雰囲気のものをお願いするなら太田さんしかいない、と思っていましたので、実は最初から太田さんご指名と心が決まっていました。太田さんの奏でる音そのものがこの曲の「ウォームさの中にある寂寥」というイメージにぴったり合っているので、太田さんが弾いてくれたらそれだけで大丈夫!くらいに考えていたのです。が、太田さんから上がってきたアレンジデモを再生したら、なんとそこにはウクレレが。
直球といえば直球なのかもしれませんが、思わず”ニヤリ”としてしまったわたくしでした(笑)。

こういう拡大解釈は大歓迎。ハワイの楽器であるウクレレの、緩く張られた弦の響きのおかげでゆったりした空気感とウォームさが増しました。
と、いうか、なんだかもう温くて汐の香りがする風の手触りが浮かんでしまって、今すぐ沖縄とか宮崎とかに行ってアロハとか浴衣とか着て海辺の家の窓辺でゆるゆる風に吹かれながらオリオンビールとか焼酎とか飲みたい!!!!(←ノンブレスでどうぞ)と思ってしまいました。おかげでこの曲を聴く度オリオンビールが浮かびます。パブロフです。…って脱線しましたすみません。

ちゃらりちゃらりと小さく刻む弦は寄せて返し足首を洗う汀の波、その細波に身を任せてたゆたえば、弦楽四重の夏風がゆるりと吹き抜ける。間奏抜けのツリーチャイムは黄昏の垂帳の裳裾たなびく一番星のきらめき。やはりここでも太田さんのアレンジはそれぞれが明確な姿を持って絵画的な風景を成す。

太田さんの曲で演奏して下さった弦楽四重奏チームは珍しいことに全員が女性で、そのせいか音にも感性のやわらかさややさしさが表れているように感じます。…と言いながらも弦四の皆様クラシックだけでなくジャズからプログレまでこなせるやはりというか「こちら側」ニュアンスの方々でしたが(笑)。弦四の写譜は「月の沙漠」でピアノを弾いて下さった鶴田萌子さんが担当して下さいまして、弦四の収録にも立ち会って下さったのですが、現場ではアレンジャーであるはずの太田さんに対しても鋭いドSツッコミを(しかも音楽以外の部分で!)入れていらしたのが印象に残っています。
そして何故か現場にいる人間が全員(奏者、アレンジャー、写譜、エンジニア、ヴォーカルまで全て)とんでもない酒豪と判明。アルバム発売の暁にはみんなで杯を交わしましょう、と約束したことでした。…ってまたお酒の話に、すみません。

*
この曲の作詞は島崎藤村。藤村というと詩人というより後期の作家のイメージが強いかもしれませんが。
そして意外なことに、この詞の舞台となっているのは愛知県。しかもこの「流れ寄る椰子の実」を拾ったのは藤村本人ではありません。民俗学者柳田國男です。彼が療養のため伊良湖に1か月半ほど滞在したとき拾った椰子の実、その話を藤村に語ったところ、藤村はたいへんな感銘を受け、「自分が作品として発表するまでその話を他言しないで欲しい」と願い出たのだそうです。
藤村の中の幻想と詩情に包まれてその心の中で羽化した旅情と望郷は、カタンシリーズの根底に流れる「どこにもないどこか」であり「魂の故郷」へと繋がるものと感じます。


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◆[Note:01] 月の沙漠 [カタン<第二集>]

皆様「カタン<第二集>」、そろそろお手元に届きましたでしょうか?そして、最後まで聴いて頂けましたでしょうか?
今回の唱歌アルバムは1枚目の「無印カタン」よりは睡魔を召喚しないのではないかと思うのですが、「荒城の月」あたりに催眠ゾーン(笑)がありますので、そのへんで皆さん寝オチして最後まで聴けない現象が起きていてもおかしくはないかなと。…は、思うのですが、頑張って縁起の悪い13曲目まで辿り着いて下さいませ。
トレイにCDをまだ入れていない人は今すぐ開封してイン!ですよイン!

さて、無事に「カタン<第二集>」発売の運びとなりましたので、今日からぽつぽつライナーノーツ的なものを収録曲を追う形で書いていこうと思います。まだ聴かれていない方で、ネタバレがお嫌いな方はここで華麗にUターンして、聴き終わってから読んで頂ければ幸いです。

初回は1曲目、「月の沙漠」。

*
「カタン<第二集>」の1曲目を担う「月の沙漠」。
CDをトレイにのせて再生ボタンを押したら声だけが流れてくる、というのはなかなかの冒険だと思いますが、そのアカペラをまるまるワンコーラス持ってきたアレンジャーの太田さんの思い切りにみとせが一番驚きました(笑)。
始まりはアカペラにしましょうか、というのは打ち合わせ段階で出ていた案なのですが、ワンコーラス目の後半からはバッキングがつくだろーなんて思っていたら、頂いたDEMOではいつまで経ってもバッキングが入ってこない。ワンコーラス終わってから漸くピアノが、と思ったら、ものすごくシンプルなフレーズ。こういうアレンジ、すっぴん(笑)な分だけやるのに勇気が要りますので、この形に決めた太田さんに逆の意味で度肝を抜かれました。太田さんにしてはあまりにもシンプルですが、思えばこの英断は「うたものギタリスト」を自ら名乗る太田さんにしかできないかもしれません。と、思ったところにきっちり間奏から満を持しての太田節満載ギターソロ登場(笑)、一気に太田ワールドになります。叙情派ギタリストの面目躍如、憂愁なフレーズが聴きどころです。

ピアノの重たい四つ打ちは末なき砂の上を往く歩みの重さ、緩やかに弧を描き交差する弦楽四重奏は果て無く広がる砂丘を見渡す視線、語り部の如く雄弁に道行きの哀しさを物語るギターの音色。絵画のように音と音とが絡み合い、「月の沙漠」の風景と叙情を描いていきます。
行く末の見えない沙漠に、引き返す先もない荒涼の砂丘に何を思い描くのか。幻想的な情景と物語をなぞる声と息の繊さに、「月の沙漠」の抒情を感じて頂ければ幸いです。

*
実はこの曲はとにもかくにもみとせが唱歌の中で一二(いやすみません、五指…で足りるかな…)を争うほど愛している曲で、1枚目のときから入れたくて候補曲にはあったのですが、自分の中でアレンジが定まらず、結局入れられなかった曲でした。今回もアレンジが自分の中ではっきりと決められないままやはり候補曲リストにだけは入っていたのですが、太田さんと一番最初の打ち合わせをした際、候補曲リストをお渡しして「やりたい曲はありますか?」とお伺いしたら、「月の沙漠」と即答。真っ先にあげて下さるなら、太田さんの中にあるイメージにこの曲を預けてみようと思い、アレンジをお願いしました。
太田さんの抒情と哀愁、みとせのか繊さが相まって、実に救いのない(笑)素敵な「月の沙漠」になったと思います。

*
「月の沙漠」の作詞者は加藤まさを。当時人気の抒情画家でもありました。
サバク、は「砂漠」ではなく「沙漠」の文字が正解。
まさをが千葉の御宿海岸で結核療養をしたいた際に見た砂浜の風景から想を得た詞だそうで、この詞にモデルとなる外国の民話などはありません。アラビアンなイメージのある詞ですが、高貴の血筋の者が供も連れずに旅なぞしませんし、何よりそんな軽装で砂漠を行くなど自殺行為です。本当の砂漠の風景も気候も踏まえない、画家の幻想から生まれた架空の異国の情景。リアリティという実像を脱した抒情に漂う悲しみは、触れることのできない月から零れる甘露のようです。

千葉・御宿海岸にはこの曲を記念した碑と像が立っています。


・「カタン<第二集>」公式サイト
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◆[Note:00]「カタン<第二集>」のこと

みとせのりこの唱歌アルバム第二弾「カタン<第二集>」、6月8日無事に発売となりました。既にお聴き頂けましたでしょうか?通販で申し込んで、まだお手元に届いていない方もいらっしゃる様子、お待たせしてしまってすみません。お手元に届いたら決して積まず(笑)に!何はともあれ開封して音盤はCDトレイにイン!して下さいね、イン! そして鳩山郁子さんの手による美しくも細緻なジャケットやブックレットに描かれたモチーフたちを隅々まで眺めて心癒されて下さい。

鳩山さんの公式ブログでも鳩山さん自らの撮影による美しい写真と文章でカタン1と2を並べて紹介して下さっております。2枚並べると昔の文庫本のよう。古書店でこんな装丁の本が売られていたら中身も見ずに即買い間違いなしのみとせです(笑)。

鳩小屋通信(鳩山郁子公式ブログ)

ジャケットを囲むように写りこんだ植物、グラス、そして真空管までも細やかな鳩山さんらしい美学に溢れ、作品のみならずその作品に対する姿勢から生活、感受性と人柄まで含め、わたしも見習いたい、とお会いする度に思います。


*
さてさて、まだ音盤をお聴き頂いていない方もおいでと思いますので、楽曲を追ってのライナーノーツはもう少し後に致しまして、今日はアルバム全体についての零れ話などを。

TEAMの音楽プロデューサーでみとせの作品を担当してくださっている中村さんに「カタン2をつくりませんか」とお声がけ頂いたときは、「正統進化系で」ということでお話を頂戴しました。ですので、正統進化の前提で企画を立てつつ、でもまったく同じというのも勿体無いぞ、と思い、コンセプトに少しばかり変化をつけたのですが…出来上がってみたら予想よりはっきり違いが出たなあと思いました。

1枚目は春〜初夏の午前中のような心地よく淡い光、洗いざらした木綿(=カタン、コットンの昔の日本語的発音です)の袖を抜けていくやさしい風を想定して作ったのですが、2枚目のイメージは夜。収録曲を見てお気づきの方もおいでと思いますが、正確には裏テーマが「月」と「星」だったりします。また、1枚目は中性的で未分化な雰囲気でまとめていましたが、2枚目はちょっと少年的な方向に寄った配曲になっていて、そのため全体に1枚目より硬質で重い印象になっているのではないでしょうか。肌触りとしては木綿だけでなく麻の入った「コットンリネン」な感じです。(とはいえ少女モノを欠いてはみとせのりこの人格とコケン<笑>に関わりますので、月夜の中に硬質な少女性も微かに滲ませつつ)。

そんな少年的コンセプトはジャケットからブックレットの隅々にまで表れています。真空管、組み立て式の蓄音機=MIKI Phoneやオルガニート(手廻し式オルゴォル)、そして時計草とメカニカルで繊細なのものが満載。それらの少年性はちょうど鳩山さん本来の作風に重なる部分でもあり、今回は前回よりもより鳩山さんらしさを出して挿画を描いて頂けるようにお願いしましたが、ジャケット見開きのイラスト、ジオラマ的な少年たちの理化学宇宙に金平糖のお星さま!まるで裏テーマを見抜いたかのような一枚に、鳩山さんの感受性の鋭さを見たのでありました(月と星が裏テーマだなんて一言も言ってなかったのですよ!)。

アルバムのジャケットというのは形なく不可視な「音」というものに与えられた「姿」だと思っているみとせですが、そんな符合をもって貌づくられた「カタン<第二集>」、音の隅々、挿画の隅々までは勿論のこと、ジャケットと音のシンクロまで楽しんで頂ければ幸いです。
(あ、歌詞ブックレットの見開きイラストの中に、小さな幸運のシカケがあります。もう気づかれた方もいらっしゃるかな。)

*
音楽というのは嗜好品の極致なので、万人の口にぴったり合う料理を作ることができないように、万人が最高に自分にぴったりだと感じる音楽をつくることはできません。そんな中で尽くせるベストは、自分だけは掛値なく好きだと言えるものをつくること。
たくさんの方の力を借りて、その方々の心地よいと思うものと重ね合わせながら、わたしはわたしが心地よいと感じるものを丁寧に選んでこのアルバムにまとめました。
1曲でも、ワンフレーズでも、お気に召して頂けるところがあれば幸いです。さらに幾つかの曲を慕わしく感じて頂ければ、より幸いです。
このアルバムにこめられた「魂の故郷」が、貴方の世界の片隅の小さな路地とつながっていますよう、そう祈りながら2枚目の唱歌アルバムを送り出したいと思います。


・「カタン<第二集>」公式サイト
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◆「カタン<第二集>」明日8日発売

「カタン<第二集>」、発売前日になりました。特設サイトの方でも視聴がアップされております。ツイッターではこまめに告知させて頂いておりますが、皆様楽しんでいただけてますでしょうか?
個性溢れる、というか個性の塊のようなアレンジの数々、唱歌の新たな表現として楽しんで頂ければ嬉しいな〜などと思っております。

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挿画を手がけて下さった鳩山郁子さんのブログではジャケット画像だけでなく、ブックレット内の挿画のチラ見せ画像が掲載されておりますので、是非是非ご覧になって下さい。鳩山さんの手で撮られた写真で見ると鳩山さんの美意識と世界観が二重三重のプリズムと化し、より美しさが伝わります。こんな素敵なジャケットが自分のアルバムだなんて幸せでなりません。ずいぶん前から密かにファンだった鳩山さんにシリーズで挿画を描いて頂けるなんて、これだけで唄を唄っててほんとによかった…!と心から思ってしまいます。

鳩の備忘録 La note de la colombe

「カタン―cotton― 第二集」サンプル落手、菫ソーダ水祝杯用レシピ付き。
http://junekite.exblog.jp/13717746/
菫色の色校、菫ソーダ水の新しいレシピ
http://junekite.exblog.jp/13535638/

こんな素敵な鳩山さんの最新作漫画「すみれとピッケルハウベ」は6月25日頃発売の「アックス」誌(青林工藝舎)掲載です。


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また、6月1日からの回と、6月8日からの回の2回にわたり霜月はるかさんのWEBラジオ「霜月はるかのFrostMoonCafe+」にもお邪魔させて頂いております。
6月1日から放送の147回は、このWEBラジオ「霜月はるかのFrostMoonCafe+」の新テーマ曲である「smile link」のシングルCD発売日ということでお祝いムードかつ、5月に行われたTEAM Liveの話も交えつつ楽しくお話させて頂きました。148回はカタンの話も少し、といったところなのですが、しもつきんと会うとなんだかほんわり和んでしまって、プライベートな茶飲み話気分で番組収録が終わってしまうという(笑)。マイクオフの場では納豆について語り合ってたし(笑)。みとせ参加の部分はそんな雑談に近いお話ですが、よろしければ聴いてやって下さいませ。
現在第147回放送中、8日には148回放送開始です。

smile link」のシングルCDもサンプル頂いたんですけど、TEAM Liveのときからサビの「ねえ教えて〜♪」がことあるごとに頭を回ってます。この曲、しもつきんの声とあいまってすごく耳に残る。しもつきんはほんとにいい意味でPOPで素敵だなあと、どんより担当みとせは思うのでありました。


*
「カタン<第二集>」は1枚目の無印カタンより濃度高めで、オリジナルアルバムにやや近づいたようなサウンドになっていますが、そんな中にあっても色褪せない魅力を持った唱歌のメロディ、歌詞、そして抒情をスルメのように(笑)繰り返し味わって頂けるかと思います。
音についてはいろいろお伝えしたいことがあるのですが、いろいろありすぎる(笑)ことと、やはりまずは何の先入観も持たないままで音を聴いて頂いてから!と思いまして、発売してから少しずつ、ライナーノーツ的な形で更新していけたらと思っております。

皆様にアルバムをお聴き頂いた頃に、ぽつぽつとマイペースでアップしていこうと思いますので、お気が向いたらみとせの徒然ひとりごと、お立ち寄り頂ければと思います。


ご予約くださっている方も、明日店頭に探しに行くよ!という方も、うっかり忘れてたという方も、みとせのりこの拡大解釈唱歌アルバム第二弾「カタン<第二集>」、お手元に置いて楽しんで頂ければ幸いです。


・「カタン<第二集>」公式サイト
http://www.team-e.co.jp/sp/cotton2/
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◆「カタン<第二集>」マスターアップしております

低血圧で今日一日がどこかに消えてしまったみとせです。皆様おげんきですか。
というわけで(どういうわけだ)、マスターも工場に入ってから特に問題が上がってこないので、これで安心して宣言できます。

「カタン<第二集>」マスターアップ致しました!!

音源自体は先週アップしていたんですが、小心者のみとせ、工場OKが出るまで心配で公に宣言できませんでした(笑)。
唱歌をトラッドポップ、トライバルポップとしてとらえ、歌詞のもつ風景やイメージをさらに拡大して送るみとせのりこの唱歌シリー第二弾、どうぞよろしくお願い致します。6月8日発売予定です。

それにしても、振り返ると長かったというか、本当にいろいろあった制作でした。
特設サイトを公開した翌日に地震が起き、世界は一変して、東京もいろいろなものが麻痺。そんな中多くのことを考え、多くのことに迷い、多くのことを乗り越えての制作、いろんな意味でこの作品は忘れられない作品になると思います。
3月中旬に予定していたほとんどの収録が飛んでしまったにもかかわらず、その後により素晴らしい形にして新たな収録日に向かって下さったアレンジャー、奏者の皆様、そしてティームエンタテインメントのA&R中村さんに心から感謝しております。

アマゾンやHMVなどのCDショップでも予約が始まっていますが、とらのあなさんでは予約者様から抽選でのサイン色紙プレゼント企画を開催して下さってます。

アマゾン
とらのあな(サイン色紙抽選プレゼントあり)


震災以降ライヴハウスも客入りが厳しい、新しいアルバムもなかなか聴いてもらえない、という話はさんざん耳にしていたのですが、こうしてアルバムを作ってみるとやっぱり世の中がいろいろたいへんなんだなあと痛感します。みとせのアルバムは基本「鳥人間コンテスト」(@中村さん)的な”低空飛行だけど延々着水しない”(笑)性質のようなので、ゆっくりゆったりやっていけばいいとは思っているのですが、初動が動かないと店舗さんにも注目して頂けないので、CDが手に入る環境が狭くなってしまったり、次作のリリースペースにも影響するのが悩ましいところです。…3作目の構想も既に枠組みくらいはできちゃってるので(笑)。←2枚目を作るときについつい3枚目の妄想も書きとめてしまいまして…。
そう、3枚目こそはヲトメ唱歌をですね!なんていう早すぎる心の風呂敷はさておき(笑)、ティームさんの特設サイトでも試聴曲が随時追加されておりますので、聴いてやって頂けると嬉しいです。試聴は曲中でもおとなしめの導入部を切り出すことが多いので、試聴では曲の魅力の1割もお伝えできないのがもどかしいところですが。

…なんて書いてたらずいぶん長くなってしまいました。
少しは収録時のエピソードなど書こうと思っていたんですけど、そのあたりはまた次回以降のブログで徒然に更新していこうと思います。

とにもかくにもマスターあがりました〜〜〜〜 ヽ(´∇`)ノばんざい!


・「カタン<第二集>」公式サイト
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◆TEAM Entertainment Live Act 2011と「カタン<第二集>」

ブログではまたもやご無沙汰してしまってすみません。
8日の「TEAM Entertainment Live Act 2011」にお運び下さった皆様有難うございました。
参加するだけでも一日楽しいお祭り気分と音楽の喜びを堪能できるというのに、さらにリスナーの方からお酒をはじめ贈り物も頂いてしまい、こんなに幸せでいいのか、恐縮しきりな一日でした。

みとせコーナーの演目は「カタン<第二集>」の発売前ということで唱歌をお届けしましたが、第二集が6月8日発売予定のため、選曲には第一集からの曲も取り入れました。

1.月の沙漠(第二集より)
2.花の季節(第一集より)
3.夢路より(第二集より)

そして当日のバンドの編成に合わせてリアレンジ、テンポも曲中で揺れる有機的な曲ばかりでしたので、ライヴならではの雰囲気とテンションのあるコーナーになったと思います。それもこれも少ないリハ数でびしっと揺らぎと呼吸を合わせてくれた手練れのバンドの皆さんのおかげです。特に「花の季節」は、間奏をリハ当日にいきなりのばしてそれぞれの楽器のソロ回しをお願いするという無茶振り(笑)。そんなみとせの要求に最高の笑顔で「やりましょう!」と応じて下さって、しかもかっちょいいソロを披露して下さったメンバーの佐々木さん、福田さん、長谷川さん、矢吹さんに心から御礼を申し上げたいです。そして「ティームライヴのどんより系担当」(笑)みとせのコーナーでも手拍子を下さったお客様にも御礼を申し上げます。

本当はライヴ後すぐにもお礼をブログにと思ったのですが、何せ翌日が「カタン<第二集>」のミックス最終チェックとトラックダウンだったので、少しでも耳と体力を温存しようと思ってライヴ当日はすぐに寝てしまいました。軟弱ですみません。
でもそのおかげでTDではしっかり集中できて、それぞれの楽曲の情感をより高められたと思っております。TDが進むと早くこの音を皆様にお届けしたい!という気持ちがリアルに湧きあがってきて、でもこれでもうマスタリングしたらアルバム制作も終っちゃうんだ、と思うとむしょうに淋しくて、終わってほしくないけど聴いてほしいアンビバレンツにひとりでくねくねしてみたりします(笑)。

そうこうしているうちに「カタン<第二集>」特設サイトにも試聴が徐々に上がっております。本日10日にも新たに「黒猫のタンゴ」が追加されて、現在の試聴曲は全部で4曲。

・雨降りお月(編曲:吉野祐司)
・トロイカ(編曲:オオフジツボ)
・メリーさんの羊〜アルプス一万尺(編曲:オオフジツボ)
・黒猫のタンゴ(編曲:吉野祐司)

どの曲もアレンジャーさんと奏者の方の個性満載、濃ゆ〜い出来になっております。
当初はここまで濃いアルバムにする予定ではなかったはずなんですが、進行にともなって判断がどんどん自分の好みの方へ寄って行き、気づくとやっぱりこうなっておりました(笑)。
所詮みとせのりこです。

唱歌のアルバムとしても、トライバルポップとしても楽しめますし、唱歌と考えずにみとせのアルバムとしても堪能できる、噛めば噛むほど味わいが出るようなスルメなアルバムに仕上がると思いますので、どうぞ引き続きの試聴公開と、アルバム発売を楽しみにしていて下さい。


・「カタン<第二集>」公式サイト
http://www.team-e.co.jp/sp/cotton2/
ティーム・エンタテインメント

嗚呼、ライヴも終ったので2ヶ月寝かせたままの医療戸棚をそろそろ起こさなくては。
寝た子が育ってしまう。

◆「カタン<第二集>」発売延期とアレンジャー公開

三寒四温かあたたかかったり寒かったりの日々ですが、皆様いかがお過ごしですか?
昨日より今日、今日より明日が穏やかで充実した日になるようにと願っています。

さてさて、先日軽く触れました「カタン<第二集>」発売延期の件、まだ新たな発売日は調整中ではあるものの、サイトの方にも正式に延期の旨告知させて頂きました。楽しみに思っていて下さった方、そして既にアマゾンでご予約下さった方、ほんとうにすみません。
でも「延期になります、日程未定です」だけの発表をするのは淋しかったので、ここで予定を繰り上げて、各曲の担当アレンジャー様も公開することにしてしまいました。
既にサイトで公開されておりますので、是非「トラックリスト」のページをご覧下さいませ。
予想が当たった方はほくそ笑みながら試聴を待って頂ければと思います(笑)。

よ〜し、明日は収録!
唄えることの幸せを噛み締めつつ、その幸せと喜びとをアルバムにのせて皆様にお届けできるよう、楽しくがんばってまいります。


・「カタン<第二集>」公式サイト
http://www.team-e.co.jp/sp/cotton2/
ティーム・エンタテインメント

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